マン共
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1 用法違反①(住宅部分での治療院) 本裁判例は,入居者が被告1名であること,設備がベッド2台であること,営業日が月曜日から土曜日であること,営業時間が午前9時から午後7時までであることなどの事実を認定の上,「治療院の使用態様は,その規模,予想される出入りの人数,営業時間,周囲の環境等を考慮すると,事業・営業等に関する事務を取り扱うところである『事務所』としての使用態様よりも,居住者の生活の平穏を損なう恐れが高いものといわざるを得ず,到底住戸使用ということはできない」と判示しています。 本裁判例によれば,本件のカイロプラクティック治療院も,住宅使用とはいえません。373 共同利益背反行為に当たるか 住宅専用を定める管理規約に違反する行為があったとしても,これが共同利益背反行為(法6条1項)に該当するかは,別途,実質的に判断されます。 具体的には,用法違反が問題になっている区分所有者の「当該行為の必要性の程度,これによって他の区分所有者が被る不利益の態様,程度等の諸事情を比較考量して決すべき」(東京高判昭和53年2月27日金法875号31頁)とされています。 この点に関し,前掲東京地判平成17年6月23日は,営業日,営業時間,予想される出入りの人数,設備の規模,周囲の環境等の専用部分の使用実態からして,「『事務所』としての使用態様よりも,本件マンション居住者の生活の平穏を損なう恐れの高いものであ」ること,及び「住戸部分に不特定多数の患者が常に出入りしている状況は,良好な住環境であるとは言い難く,住戸部分の区分所有者の共同の利益に反することは明らかである。」と判示しています。 本設問においても,区分所有者乙が専有部分をカイロプラクティック診療所として使用することにより,住民ではない不特定多数の患者がマンションに出入りすることになります。これは,平穏な住環境を求める区分所有者に対しては著しく不利益を与えるものであり,したがって区分所有者乙による治療院としての使用は,共同利益背反行為に該当します。

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