マン共
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5 風俗店としての利用 では,本件のように住宅専用を定める管理規約があるマンションの専有部分において,風俗店を営んでいる場合も共同利益背反行為に該当するでしょうか。 この点,風俗営業を行うことは風俗店利用者と同マンションの入居者が接近することや,不特定多数の人間がマンションを出入りすることになるなど,カイロプラクティック診療所を営業する場合と同様,平穏な住環境第1 専有部分における共同利益背反行為384 権利濫用 権利の存在が認められたしても,その行使が権利の濫用に当たる場合には,権利行使は否定されます(民法1条3項)。本設問において,共同利益背反が認められたとしても,区分所有法に基づく権利行使が権利濫用に該当すると判断されてしまうと,差止請求等が否定されます。 それでは,どのような場合に権利濫用に該当すると判断されるのでしょうか。 この点について,前掲東京地判平成17年6月23日が参考になります。 同裁判例は,「原告が,住戸部分を事務所として使用している大多数の用途違反を長期間放置し,かつ,現在に至るも何らの警告も発しないでおきながら,他方で,事務所と治療院とは使用態様が多少異なるとはいえ,特に合理的な理由もなく,しかも,多数の用途違反を行っている区分所有者である組合員の賛成により,被告……に対して,治療院としての使用の禁止を求める原告の行為は,クリーン・ハンズの原則に反し,権利の濫用といわざるを得ない。」と判示し,管理組合の請求を棄却しました。 ここでは,①用法違反している他の区分所有者を長期間放置してきたことと,②用法違反をしている他の区分所有者の賛成により訴訟提起のための決議がなされたという矛盾挙動の2点が,権利濫用に該当すると判断された理由として挙げられています。 このように,権利濫用の判断の際には,住居専用規定が日頃からどの程度遵守されていたかという点が考慮されています。同裁判例には,日頃の管理業務を適正化・厳格化させる意義があります。

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