はしがき 平成29年末日時点の日本国内のマンションストックの総数は644万1千戸であり,居住人口は約1533万人と言われています。マンションは,その構造上,複数の専有部分が相互に密接して建築されていることが多く,そこが区分所有者の生活の場となるため,生活習慣等の相違により区分所有者間で紛争が生じることも少なくありません。また,その紛争が,区分所有者間のみならず,マンション全体に影響を及ぼすこともあります。日本の人口の約1割がマンションに居住している現在,このような問題は今後も増えていくことが十分予想されるところです。 マンション内の規律に関しては,建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)が共同利益背反行為を禁じ,複数の対処法を定めています。しかし,どのような場合が共同利益背反行為に該当し,さらにはどのような対処法を活用できるかは,法律上一義的ではありません。 そこで,本書では,日ごろからマンション内の紛争の解決に携わってきた弁護士が,具体的な裁判例を基に,共同利益背反行為の該当性について検討し,さらには各種対処法の活用について紹介しました。本書の特色は,以下のとおりです。 第1に,本書は,マンション管理に携わる弁護士等の専門家だけではなく,日ごろから管理の最前線に立つマンション管理組合の役員や,マンション管理会社の担当者にも活用いただけるよう,具体的な紛争事例を設け,これに関する裁判例の紹介と事案の検討という形を採用しました。また,わかりやすい解説も心がけました。 第2に,マンション管理に携わる方を広く対象としているために,専有部分と共用部分の区別というマンションの基本的な構造についiはしがき
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