2 美容医療の広がりと苦情相談の増加 最近は,美容医療機関がインターネットなどでも広告をするようになり,美容医療の認知度が上がったことなどから,美容医療というマーケットが広がり,多数の医師・医療機関が参入している傾向にある。 医療機関の形態としては,大学病院等の総合病院が美容外科を設けている場合もあるが,厚労省「平成28年(2016年)医師・歯科医師・薬剤師調査の概況『表6 診療科(複数回答),施設の種別にみた医療施設に従事する医師数』」等によると,美容外科医の8割以上が診療所勤務となっている。 診療所(クリニック)には,全国各地にクリニックを置き,テレビや新聞チラシ,インターネットで広告を出し,大規模に事業展開しているケースもあれば,個人の医師が小規模のクリニックを開設しているケースもある。最近では,開業セミナーなども開かれており,皮膚科や形成外科・美容外科医の経験がない医師であっても,そうしたセミナーや資料などの情報を頼りに,美容外科医として小規模のクリニックを開業するケースもあるようである。こうした傾向は,昨今,低侵襲的な手術(切らない,注入等)が増えたことから,形成外科・美容外科としての経験が浅い医師であっても,対応しやすいという事情もあるだろう。 他方で,マーケットの拡大に伴い,苦情相談の件数も増加している。 全国の消費生活センター及び国民生活センターのPIO─NET1)に寄せられる相談のうち,美容医療に関する相談は,平成9年には337件であったが,年々増加し,平成17年には1,000件を超えた(大江昌彦ほか「国民生活センターに寄せられる美容医療相談の調査結果」日本美容外科学会会報32巻2号98~103頁)。平成25年には2,000件を超え,平成26年に2,500件とピークを迎え,平成27年以降も2,000件程度の相談数が続いており,この20年間で明らかに増加の傾向にある(ただし,消費生活センター等からの経由相談は含まない数)。51)PIO─NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)とは,国民生活センターと全国の消費生活センターをネットワークで結び,消費者から消費生活センターに寄せられる消費生活に関する苦情相談情報(消費生活相談情報)の収集を行っているシステム。第1 美容をとりまくトラブルの背景と法規制
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