79また,「具体的な説明は原告から左下顎骨に関する手術の同意をとる際になされてしかるべきであって,本件手術の直前に行うこと自体,原告が当該手術に同意するか否かを決定するためには不十分といわざるを得ない」として,説明義務違反を認めた。ⅲ 下顎角の過大切除か否か 「下顎角を過度に切除して,下顎角を消失させたり,スムーズな下顎の輪郭を失わせたり,不自然な下顎のラインを生じることのないように注意すべきであるとされている」とした上で,原告もほんの少しだけ削るよう要請していたことを考慮して,「少なくとも原告の主観的願望を損なう結果となっている事実は認めることができる」として,原告の主張は一部理由があるとされた。ⅳ 眼窩骨を無断で切除したか否か カルテの記載,手術前後のレントゲン写真から,眼窩骨が削られていると認めることができないとされた。ⅴ オトガイ神経を損傷したか否か ①オトガイ神経の損傷は,下顎骨形成術の合併症とされていること,②原告が術後に左下顎の知覚異常を訴えていたこと,③後医における治療及び診断内容から,被告が原告の左下顎のオトガイ神経を切断し,若しくはこれを縫合するに際して過誤があったとされた。ア 事案の概要 下顎骨隅角部の切除手術について,自己が伝えた希望に反して過剰かつ不均衡に下顎骨を切除された結果,顔面に左右差や下顎部の変形が生じたと主張した事案。イ 結 論 全部棄却第1 顔の輪郭に関する施術下顎角形成術についての裁判例【3】東京地判平16・7・28(ウエストロー・ジャパン)
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