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80第2章 施術別概要と裁判例ⅰ 原告との合意に従って施術をしなかった過失の有無 「原告は,本件手術の前に,えらの部分をほんの少し1,2ミリだけ薄くしたいとの希望を述べ,A医師との間でその希望に沿った手術を行うことの合意をしたと主張した」が,カルテにそのような記載がないことを根拠に,そのような合意自体認定されなかった。ⅱ 原告の希望を把握する適切な措置をとらなかった過失の有無 下顎骨隅角部の切除手術に際しては,「ペーパーサージャリーやレントゲン写真上で切除部位を図示するなどして,手術前に患者と下顎骨の切除部位や切除量を話し合って決定しておき,それに従って手術を行うという方法」も用いられていると認定したものの,①計画どおりに下顎骨の切除を行うことは困難であること,②手術後に生じる外貌の変化を正確に予測することは難しいことから,上記のような方法が術前準備として必須のものということはできないとされた。そして,原告の希望の確認と,下顎骨の切除予定部位,手術後に予想される結果に関する一定の説明を行ったとした。 手術後にもある程度の左右差が存在することは当然に予想されていたこと等から,「原告の顔面にもともと左右差があることや手術後も左右差が生じることについて,……本件手術前に,そのことを原告に説明したうえで,手術内容や手術後に生じる結果について原告と話し合いを行う義務」は否定された。 下顎骨隅角部の突出部分の切除により,「手術後の下顎部の隅角の形態や位置が手術前とは異なるものになることは,当然に予定されている」ことから,「下顎骨の切除予定部位の図を示して説明を行うことのほかに,下顎部の隅角が手術前よりも下方に形成される可能性のあるこウ 主な争点① 原告との合意に従って施術をしなかった過失の有無② 原告の希望を把握する適切な措置をとらなかった過失の有無③ 適切な手術をせず原告の下顎部に変形を生じさせた過失の有無エ 判 旨

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