i 本書の執筆を担当したのは,東京の医療問題弁護団に所属する弁護士9名である。医療問題弁護団は,1977年に設立され,医療被害の救済,再発防止,患者の権利確立,安全で良質な医療の確立などを目的として活動している団体であり,活動の一つの柱として,患者側からの医療相談を受け付け,個別相談に対応している。 その医療相談の中で,数年前から,美容医療に関わる相談が増えてきたという実感があった。他方,美容医療の分野は,その特殊性から相談を受ける弁護士にとっては困難を感じることも多い。 そのため,2012年6月,医療問題弁護団の有志で,美容医療に関する勉強会(PT)を立ち上げた。PTでは,施術部位ごとに医学的知見,合併症,裁判例などを取りまとめる勉強会を1年ほど続け,マニュアル的な資料ができあがった。結果として,この時のPTでの勉強会の蓄積が,本書の基礎となった。 資料としてまとまったものができた段階で,美容医療被害の実態を調査すべく,2013年10月,電話相談(ホットライン)を実施しようということになった。当日,5台の電話は鳴り続け,1日で91件もの電話による相談があった。そして,そのうち24件が大手美容外科による「糸によるフェイスリフト」の被害相談だったことから,被害救済を目的として,PTのメンバーを中心に弁護団を立ち上げることになった。あれよあれよ,という間のできごとであった。本書の執筆者9名全員が,この糸リフト被害対策弁護団のメンバーである。 この糸リフト被害については,2014年4月に一次提訴(原告13名),同年10月に二次提訴(原告40名),2015年5月に三次提訴(原告20名)を行った。2017年12月に原告全員について和解による解決に至った経緯は,本書にも紹介している。 このように,美容医療相談の増加をきっかけに,いくつもの偶然が重なり,はしがきはしがき
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