民事執行及び民事保全制度における供託実務
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1 基本事例に基づくパターン事例【基本事例Ⅰ】 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・32 さいたま市中央区在住の青空広大さんは建設業を営んでいますが,経済不況の影響で,建材の仕入れ価格が値上がりし,資金繰りに窮していたため,海山銀行株式会社(所在地 東京都港区)からやむを得ず,金3000万円を借り入れました(金銭消費貸借契約 民587)。海山銀行が債権者,青空さんが債務者となります。 なお,青空さんは,海山銀行からの借入金を活用し,森林緑子さん(東京都台東区在住)の所有の土地に建物を建築し,森林さんに対してその工事請負代金請求権(金3000万円)を有しています。《パターン事例Ⅰ─1》 青空さんは,海山銀行から金3000万円を借り入れましたが,青空さんは,弁済期を過ぎても借金を返済しません。海山銀行は,金3000万円を返済させるにはどうしたらよいでしょうか?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33《パターン事例Ⅰ─1.①》 金3000万円の借金を返済しない青空さんには,所有する土地(以下「甲土地」という。)のみで他に財産がない場合,海山銀行は当然に金3000万円を回収するために,貸金返還請求を提起し確定判決を経て,この甲土地に対して強制執行の手続で差押え,強制競売により金3000万円の配当を受けようと考えました。しかし,確定判決前に,青空さんがこの甲土地を第三者(山川さん)へ譲渡する可能性があります。 海山銀行は,これを防ぐにはどうすればよいでしょうか。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・164《パターン事例Ⅰ─1.②》 青空さん所有の東京都台東区の土地を5000万円で第三者に売買しようと考えていました。しかし,海山銀行は,青空さん所有の土地に,青空さんに対する訴訟を提起する前に,仮差押えを行いました。青空さんに裁判所から仮差押命令が通知され,土地には仮差押えの登記がされています。 青空さんが,この仮差押登記を抹消するためには,どうすればよいでしょうか。・・・・・・・・361《パターン事例Ⅰ─1.③》 債権者である海山銀行は,3000万円の借金を返済しない青空さん(債務者)に対し貸金返還請求を提起し確定判決を経て,青空さんの所有する甲土地を差し押さえ,強制競売により3000万円を回収しようとしたところ,確定判決前(口頭弁論終結時前)に,青空さんは自己所有の甲土地を海山銀行からの強制執行を免れるため,山川さん(第三者)へ譲渡し,移転登記も済ませてしまっていました。そこで,海山銀行は,青空さんと山川さんの間の譲渡が海山銀行を害するものとして,山川さんに対して詐害行為取消しの訴え(民424)を提起し,勝訴判決を得て,山川さん名義の甲土地の登記を青空さん名義に戻した上で,青空さんに対する確定判決をもって,その甲土地を差し押さえて,強制執行をしようと考えましたが,山川さんが第三者へ更に譲渡や売買をすることも考えられます。そこで,当該訴訟の判決が確定するまでに不動産が更に他の第三者に処分されないように,海山銀行は返還請求権を保全するため,処分禁止の仮処分を申し立てました。山川さんはどうすればこの仮処分の執行を取り消すことができますか。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・378《パターン事例Ⅰ─2》 海山銀行は金3000万円の金銭消費貸借契約時に,青空さん所有の不動産に抵当権(民36事例目次事例目次

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