1 近年,供託については,バブル経済崩壊後の状況を背景として,金融破綻にかかわる事件,債権譲渡による債権者不確知及び差押命令等に基づく執行供託等が増加し,全般的に事件の種別を問わず権利関係の錯綜した難解な事件など高度な法律的判断を要求されるものが多く,執行供託において,供託官は第三債務者という直接の当事者となることから,民事執行法や民事保全法を理解する必要性を強く感じていました。また,平成15年以降,執行妨害の対処,手続の合理化を行い,民事執行制度を利用しやすくするため,民事執行法は,多くの部分的な改正が継続的になされ,それに伴い供託事務の取扱いも大きく変更されてきています。 そこで,本書は,民事執行・民事保全・供託の各制度の基本的な内容を理解していただくとともに,供託に関する通達等を踏まえ,民事執行法及び民事保全法において供託がどのようにかかわっているのか,具体的な事例と関連づけながら,裁判上の供託,その中でも一番理解しにくいといわれている執行供託を中心に,できる限りわかりやすく平易な言葉遣いを心掛け,また,基本事例をベースとして,それぞれの編・章(第Ⅳ編「供託成立後の権利変動」を除く。)で基本事例を発展させたパターン事例を通して説明を試みました。 しかしながら,著者らはまだまだ勉強不足であり民事執行法等を熟知しているとは言い難く,発刊にあたって読者の方々が理解していただくものとなっているのか,不安は募るばかりですが,多くの方々の文献,書籍,法務省及び法務局の諸先輩方が御執筆された図書を参考にさせていただき,私どもの供託経験をフルに活用し整理したものです。 本書が,供託にかかわる法律の実務家の方々に若干なりともお役に立ち,活用していただければと願っております。また,これから司法書士の資格を目指している方,供託事務を担当している職員の方,特に,初めて供託実務に携わる方の一助となれば幸いです。 なお,本書中,意見にわたる部分も出てきますが,それらについては,あはしがきはしがき
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