民事執行及び民事保全制度における供託実務
61/70

33パターン事例Ⅰ─1 青空さんは,海山銀行から金3000万円を借り入れましたが,青空さんは,弁済期を過ぎても借金を返済しません。海山銀行は,金3000万円を返済させるにはどうしたらよいでしょうか?解 説 青空さんが弁済期を過ぎても借金を返済しない場合,まず,海山銀行(原告)は青空さんを被告として貸金返還請求の訴えをさいたま地方裁判所(民訴4Ⅰ)に起こします。 そして,裁判所が,「被告は,原告に対し,金3000万円を支払え。」という判決を言い渡し,青空さんは判決正本の送達を受けてから2週間以内に控訴をしないと,判決は確定します(後記「Q1」参照)。 青空さんが判決に従い素直に返済すれば,一件落着となりますが,確定判決が出ても青空さんが返済しない場合には,海山銀行(執行債権者)は,確定判決に基づき,執行裁判所又は執行官(民執2)に対し強制執行を書面(執行規則1)で申し立て,国家権力によって青空さん(執行債務者)の財産から,貸金債権の回収を強制的に実現することができます。 具体的には貸金債権をどのように回収するかというと,青空さん所有の不動産や動産があれば,執行裁判所がそれを差し押さえ,強制競売(94頁参照)にかけ,執行裁判所はその売却代金から必要な額を海山銀行に支払うことになります。もちろん,青空さんが森林さんに有している工事請負代金請求権を差し押さえることもできます。この場合,森林さんを第三債務者と呼びます。なお,その売却代金が債務額より多ければ,残額は青空さんに返し,その代金が足りない場合は,さらに,青空さんに預貯金,給与,家賃収入,未受領の工事代金等などがあれば,その全財産から選んで,さらに,差し押さえて競売にかけることができます。第1章 民事執行制度の概要

元のページ  ../index.html#61

このブックを見る