民事執行及び民事保全制度における供託実務
63/70

35 公正証書を例にとれば,原本は公証役場に保管し,正本は作成時に依頼人に交付し,謄本は利害関係人から請求があれば交付するものをいう。パターン事例Ⅰ─2 海山銀行は金3000万円の金銭消費貸借契約時に,青空さん所有の不動産に抵当権(民369以下)を設定する契約も締結し,その土地に抵当権設定登記をしていた場合は,どうでしょうか?解 説 海山銀行は青空さんが,約束の期限に金銭を返還しないときは,判決手続を経ることなく(債務名義を取得することなく),抵当権に関する登記事項証明書を提出することで,担保権の実行として担保不動産競売の方法による民事執行の申立てができることになります(民執180,181Ⅰ,155頁参照)。 不動産のほかに,青空さんが高価な動産を持っていれば,質権(民342以下)を設定する契約を締結してその動産を預かったりしておくと,第1章 民事執行制度の概要 2 担保権の実行(民執180~194) 担保権の実行とは,債権者(担保権者)が,あらかじめ債務者の財産に担保を設定し,債務者の債務不履行時に執行裁判所が国家権力を用いて,担保財産を売却・処分し,その換価金をもって担保権者に優先弁済を与えるものです(155頁参照)。 ただし,民事執行の申立てができるのは,強制執行とは違い,担保権が設定された目的物に限定されることになります。 担保物権の代表的なものとして,抵当権(民369以下),質権(民342以下),先取特権(民303以下)があります。抵当権と質権は,契約によって担保目的物の上に設定されている約定担保物権であり,先取特権は一定の要件が充たされた場合に一定の物の上に法律上当然に成立する法定担保物権です。 次の事例で考えてみましょう。

元のページ  ../index.html#63

このブックを見る