37⑵ 民法,商法その他の法律による換価のための競売 弁済供託のための競売とはどういうものか?権者に弁済をしてその債権を消滅させることを要します。また,目的物が留置権者又は第三者によって競売された場合でも,債権の弁済がない限り留置権は消滅しません(民296)。したがって,債権担保の点から見れば,他の債権者に先立って留置物につき弁済を受けることになり,優先弁済を受けるのと同じ結果になります。なお,留置物から生ずる果実については,優先弁済権を有します(民297Ⅰ,林良平編『注釈民法⑻』43頁(有斐閣,1965))。 共有物の分割のための競売(民258),遺産分割のための競売(家事手続194),弁済供託のための競売(民497,商524,後記「Q2」参照)などを指します。 共有物の分割のための競売を例にとれば,数人で土地を所有していた場合,これを共有といいますが,この共有関係を解消するには,持分権の譲渡のほか共有物の分割が認められ,共有者はいつでも共有物の分割を請求することができるとされています(民256Ⅰ)。 共有物の分割方法としては,協議による分割と裁判による分割があり,協議による分割を前提として,協議が調わないときに共有者は共有物の分割を裁判所に請求することができるとしています(民258Ⅰ)。また,「共有物の現物を分割できないとき,又は分割によってその価値を著しく減少させるおそれがあるとき,裁判所は,その競売を命じることができる。」(同Ⅱ)としており,共有物を競売してその売得金を共有持分に応じて分配する形で分割がなされます。 以上の⑴⑵の競売手続は,担保権の実行としての競売の例によることになります(民執195)。 自助売却(民497)といわれるもので,弁済の目的物が供託に適しないとき,又はその物について滅失若しくは損傷のおそ第1章 民事執行制度の概要2
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