1 「韓国・朝鮮」人の在留外国人数は,2017年末現在,「中国」(約74万人)人に次いで,約48万3千人である。その中で,日本の敗戦(1945年)前後から継続して日本に居住する者及びその直系卑属は,約32万2千人である。 本書は,日本に在留している「韓国・朝鮮人」の「相続」の法的な取扱いを検討した書である。そのためには,日本・韓国・北朝鮮の国際私法,韓国と北朝鮮の家族法,日本と韓国の身分登録法の理解が必要であり,それらを総合的に把握することが欠かせない。 しかしながら,取り扱う法分野の広さと収集した膨大な資料が,私を圧倒し,かつ,苛さいなんだ。執筆からの約3年間,階段を上っているのだろうか,頂上に果たして辿りつけられるのだろうか,そんな感覚に何度も襲われた。階段の踊り場で立ち止まっては,諦めようかと思った時も一度ではなかった。喘ぎ喘ぎながらようやく完成に漕ぎつけられたというのが率直な感想である。 執筆中に,これまでに触れ合った人々との思い出が,浮かんでは消え,消えては浮かんだ。司法書士業を始めた1984年から支援してくれた多くの友人,1986年から始めた「定住外国人と家族法」研究会で切磋琢磨しあった司法書士,そこに馳せ参じて頂いた大学の諸先生,生成途上の法律家の行く末を語りあった「志」ある司法書士の面々,2005年から10年間立命館大学の趙ゼミで飲み語りあった学生諸君,そして「在日」の行く末を今も語り合える友人達,そんな人々を思い出しては,勇気づけられた。 本書が,「在日」の相続法に疑問が生じたときに紐解かれ,疑問を解明する際の一助になることを願いたい。また,本書が,渉外相続法の理論や実務を考える際の一つのヒントになることを願うばかりである。しかしながら,思わぬ間違いをしているかもしれない。読者諸氏のご寛恕を乞うものである。まえがきまえがき
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