第1章 情報収集と情報の取扱い 職務上請求により取り寄せた戸籍謄本等を,依頼者の要求に応えて渡してよいですか。 取り寄せた戸籍謄本等の交付を依頼者から要求されることはしばしばあることです。しかし,戸籍謄本等に記載された情報はプライバシーに関わるものですので,裁判所に提出しないものは,正当な理由がない限り,たとえ依頼者であっても交付することはできません。裁判所に提出するものでも,戸籍謄本等を依頼者に交付することで問題が生じるおそれが考えられるような場合(DV加害者である依頼者が相手方の住所地に乗り込む可能性がある場合など)には,たとえ依頼者であっても安易に交付しないように気を付けましょう。 証拠として提出した書類の写しの交付を求められた場合,その目的を問い,それが不当なものであるときは拒否すべきですが,特段問題のない理由を述べる場合にその交付をあくまでも拒否することは,受任者の立場からして困難であると思われます。そこで交付することが許されないとまではいえないと思われます。証拠化する必要があるか(資格証明書類のような1【弁倫】【職務上請求】【情報収集】【定番書籍情報】⑴ 証拠資料の収集①群馬弁護士会編『立証の実務 改訂版』(ぎょうせい,2016年)→1章文献①「立証の実務」②東京弁護士会法友全期会民事訴訟実務研究会編『証拠収集実務マニュアル 第3版』(ぎょうせい,2017年)→1章文献②「証拠収集実務マニュアル」⑵ 弁護士会照会佐藤三郎ほか『弁護士会照会ハンドブック』(金融財政事情研究会,2018年)及び各弁護士会で発刊したマニュアル。例えば,東京弁護士会調査室編『弁護士会照会制度〔第5版〕』(商事法務,2016年),愛知県弁護士会編『事件類型別 弁護士会照会』(日本評論社,2014年)など。§1 職務上請求により取り寄せた戸籍謄本等の取扱い§1
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