6 第1編 遺産分割/第1章 遺産分割調停申立前 解 説 遺産分割事件は、複数の相続人間で遺産を分け合うという構図だから、複数の相続人から同時に依頼を受けることは民法108条の双方代理に当たる。しかし、現実には、その相続人グループ間で争いがないときは、次の二つの方法のいずれかで処理する。① 調停成立直前に1人の相続人を除いて、他の相続人の代理人を辞任する。② あらかじめ「双方代理の申述書」(民法108条ただし書)を提出する。書式は、家裁に置いてある。依頼を受けた相続人間で遺産の割り振りや具体的相続分の割合をめぐって争いがあるときは、弁護士職務基本規程28条3号違反となり、懲戒問題になるから依頼を受けるべきではない。② 中途から争いが生じたとき当初は争いがなくても、遺産分割調停中途から、依頼を受けた相続人間で遺産の割り振りや具体的相続分の割合をめぐって争いが生じたときは、辞任するしかない。③ 遺言執行者が代理人に就任する行為遺言執行者は全相続人の代理人であるから、一部の相続人の依頼を受けて代理人になることは明白に弁護士職務基本規程違反であり、懲戒処分の対象になる。④ 遺留分侵害額(遺留分減殺)請求事件遺留分侵害額(遺留分減殺)請求事件は、単独行為だから、複数の遺留分権利者から依頼を受けても双方代理の問題は生じないが、依頼者間で利益相反の問題が生ずる場合があり、そのまま職務を続けることは、弁護士職務基本規程28条3号違反となる。1 双方代理の問題 複数の相続人から依頼を受ける場合2 利益相反の問題 複数の相続人間で実質的な利益相反がある場合① 当初から利益相反があるとき
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