最高裁は、遺産共有説に立っている(最三小決平成17・10・11民集59巻8号2243頁)。最高裁の見解に立つと、設例は、以下のとおりとなる。① 被相続人の死亡により、相続人甲と乙は遺産に対し、2分の1の遺産共有持分権という具体的権利を相続したことになる。② 具体的権利である以上、当然、特別受益も考慮される。③ 甲が生前有していた権利は、3000万円相当の遺産共有である。④ ここにAの特別受益1000万円を持ち戻すと対象遺産は4000万円になる。3000万円+Aの特別受益1000万円=4000万円⑤ これを法定相続分で割ると各2000万円になる。しかし、Aは、1000万円の遺産の前渡しを受けているから、今回の甲の3000万円の遺産は、Aが1000万円、Bが2000万円になる。相続財産は2000万円の不動産で、相続人は長男A・次男B。Aには1000万円の特別受益がある。遺産分割審判で共有状態にすることについて両相続人に異論はない。法定相続分は各2分の1だが、具体的相続分がA3分の1、B3分の2であることも異論はない。家裁の審判が平成30年4月1日に出たとして、この不動産の共有割合は、◆遺産が相続されると、可分債権以外は全て相続人の共有となる。◆その際の相続分は、遺産分割されるまでは、法定(又は指定)相続分であり、具体的相続分ではない。◆この遺産共有は、通常の共有と同じであり、違う点は、分割手続が遺産分割によるか共有物分割によるかの違いである。10 第1編 遺産分割/第1章 遺産分割調停申立前2 判例の立場ポイント②ポイント②設 例
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