司法書士のための遺産承継業務
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8 平成30年民法改正平成30年7月6日,民法及び家事事件手続法の一部が改正(平成30年法律第72号)され同年7月13日交付された。ここでは,①配偶者の居住権を保護するための方策について,②遺産分割に関する見直し等,③遺言制度に関する見直し,④遺留分制度に関する見直し,⑤相続の効力等に関する見直しの5項目にわたって改正がなされ,原則として,平成31年7月1日から施行されることとされているが,③のうち自筆証書遺言の方式緩和については,平成31年1月13日から施行され,①については,平成32年4月1日から施行されることとなっている(法務省HPより)。本書では,遺産承継業務に関連する範囲で改正点の概略について触れておく。1 相続の一般的効力 人の死によって開始した「相続」について,法律上どのような効力が生じるのであろうか。民法896条では「相続人は,相続開始の時から,被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし,被相続人の一身に専属したものは,この限りではない。」としている。つまり,相続が開始すると,法律に定められた相続人(法定相続人)は,相続の開始の事実を知ろうが知るまいが被相続人のすべての財産(一身専属権を除く)を包括的に当然承継するということである。そして“一切の権利義務”とは,物権,債権,債務の他に財産上の法的地位も承継する(ただし,相続財産の中には,系譜,祭具及び墳墓など祭祀承継にかかるものの所有権は含まれない。)。したがって,相続の効果を拒絶したい相続人は,相続の放棄をするしかないことになる。2 祭祀承継(民897条)① 被相続人が承継者として維持,管理,使用してきた系譜(家系図,第2 相続の効力3■▶第2 相続の効力

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