司法書士のための遺産承継業務
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4第1章 遺産分割に関する相続法の基本原則過去帳など),祭具(仏壇,位牌など),墳墓(墓地,墓石など)は,もともと先祖代々のものであり,被相続人の固有財産というわけではないので,これらは慣習に従って先祖の祭祀を主宰すべき者が承継することになる。祭祀承継者は,1次的には,被相続人の指定により,2次的には,慣習により,指定がなく慣習が明らかでない場合は,家庭裁判所の審判により定めることになる(民897条2項)。② 被相続人による祭祀承継者の指定は,遺言に限らず,書面,口頭でもよい。祭祀承継者は,慣習により定めることになっているので必ずしも相続人でなくてもよい。したがって,祭祀承継者を誰にするかは遺産分割協議事項ではないが,事実上相続人間の協議により定めることはよく行われている。遺産分割調停においても相続人間で祭祀承継者を決めることはよくあることである。裁判所も祭祀承継者として相応しくない特別な事情が無ければ協議の結果を尊重し容認している。3 共同相続 相続人が複数いる場合の法律関係について,民法は「相続財産は,その共有に属する」とし,(民898条)「各共同相続人は,その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。」としている(民899条)。“共有に属する”の解釈について共有説,合有説の対立があるが,共有説が通説とされる。つまり,各共同相続人は,相続財産を構成する個々の財産上に物権的な持分権を有し,これを遺産分割前も単独で自由に処分できる。また,被相続人の債権債務は,その目的が可分である限り,各相続人間に当然に分割されることになる(島津一郎・松川正毅編『基本法コンメンタール 相続[第5版]』(日本評論社,2007年)43頁)。なお,預貯金債権については,平成28年12月19日最高裁決定により「当然に分割されることなく,遺産分割の対象となると解するのが相当である。」とされた。相続法改正関係共同相続における権利の承継の対抗要件(新民法899条の2) 現行法上,遺言による相続分の指定や遺産分割方法の指定などにより,相続財産を取得した場合,第三者との関係について,判例は,不動産の権

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