司法書士のための遺産承継業務
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利取得については登記なくして第三者に対抗できるとしているところであるが,遺言や遺産分割の内容を知りえない第三者の取引の安全を害するおそれがあることや,登記制度に対する信頼が害されるといった指摘がなされていた。そこで,新法899条の2では,相続による権利の承継は,遺産の分割によるものかどうかにかかわらず,法定相続分を超える部分については,登記,登録,その他の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができないとした。法改正の理論的根拠として,「取引の安全確保という政策的理由に加え,法定相続分を超える部分については遺言という意思表示によって権利変動が生ずるものであり,一般的な取引などの他の意思表示による権利変動の場合と取扱いを異にする必然性はないと考えられる点にあること等をその根拠に求めることが可能との考えによる。」と説明されている(山川一陽・松嶋隆弘編『相続法改正のポイント』(日本加除出版,2018年)217頁)。1 人の死亡 相続は,人の死亡によって開始する(民882条)。人の死亡は,通常は戸籍の記載により明らかとなるが,特殊な事例として以下のような場合がある。なお,戦前の家父長制度の下での「隠居」による家督相続制度は戦後の民法改正によりなくなったが,相続登記未了物件では今なお新民法施行前の登記が残っていることがあるため,旧民法が適用される場合がある。2 認定死亡 水難,火災その他の事変によって死亡した者がある場合,死亡の事実が確認できない場合でも死亡したことが確実な場合には,その取り調べをした官庁又は公署は,死亡地の市町村長に死亡の報告をしなければならないとされている(戸籍89条)。これを認定死亡といい,戸籍上死亡の扱いとされる。第3 相続の開始5■▶第3 相続の開始

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