国交
22/44

6第1編 国際ビジネス契約 総論 したがって,自社が商品やサービスの販売側である場合は,取引先の与信を慎重に判断するとともに,代金回収リスクをできるだけ低減することを意識して契約書を検討することとなります。支払条件はできるだけ前払とするか,それが叶わない場合は信用状(L/C。第1編第2・7)の活用を検討します。 逆に,自社が対価を支払う側であれば,何らかの理由で対価を支払わない場合でも,売主側にはその回収において上記のようなハードルがあるということを頭に入れておくことは,種々の条件を定めていく上で有用といえます。 なお,支払の回収に伴う上記のハードルは,代金の支払だけでなく,商品の欠陥に基づく損害賠償を求める場面など,金銭的な請求をする全ての場面に共通します。⑵ 運送リスク 次に,物品の貿易取引である場合は,運送に伴うリスクが高いことを強く意識します。日本は島国ですので,外国(これを必然的に「海外」ということ自体が,日本の地理的な特徴を示しています)との間で物品を輸送するには,必ず海を渡らなければなりません。また,日本の郵便事情と運送業者は世界的に極めて信頼性が高いですが,外国のそれらは遅配や紛失があっても不思議ではないかもしれません。発展途上国はもちろんですが,先進国といえども,日本国内のハイレベルな感覚を前提としてはいけません。さらに,運送業者に過失がなくても,運送距離が長いため,物品が毀損するリスクは高くなります。 そこで,各当事者は,遅配,紛失,毀損も十分に想定した契約条件を検討する必要があります。物品の買主である場合は,できるだけ代金を後払にするなどが考えられます。また,これらのリスクは,貨物保険などによって一定程度カバーされるよう付保します。 このような観点から,国際貿易では,危険の移転時期,保険の付保と費用負担について取り決めることが重要となります。実務では,国際商業会議所(International Chamber of Commerce=ICC)が策定するインコタームズ

元のページ  ../index.html#22

このブックを見る