はじめにii融和的な感覚のままで海外進出することは危険です。海外には大きなチャンスが拡がっている反面,進出にはコストがかかりますし,国内では生じないような様々なリスクが待ち受け,それが大きな損失として現実化することも珍しくありません。そのような損失は,大企業であれば吸収できますが,中小企業においては本丸の存続に致命傷を与えかねません。せっかく気概をもって海外進出したにもかかわらず,お金も技術も失うような結末は,絶対に避けたいところです。 そのようなリスクをヘッジするために最も重要なことのひとつは,国際的なビジネスの特徴とそれに伴う基本的なリスクを理解するとともに,身を守るための契約書を締結することです。契約書は,国内ビジネスにおいてももちろん重要なものですが,国内では,信頼関係があるから大丈夫,形式的にあればよい,などと軽視されがちです。しかし,日本の常識が通用しない外国企業との取引においては,取引先が当方と同じ認識であるという保証は何もありませんので,契約書の一言一句が極めて重要であり,全ての拠り所となります。 いわゆるインバウンドのビジネスにおいても,取引先は外国のマインドを持っていますので,同様のリスク感覚が必要です。 とはいえ,中小企業,また大企業でもこれまでドメスティックなビジネスをしてきた企業においては,英文契約への対応をはじめとした国際ビジネスのための人的リソースが限られているのが現状です。 昨今,人工知能(AI)の発達により,コンピューターによる翻訳の精度がかなり向上し,契約書を含め,実務でも活用できるレベルとなっています。また,人工知能が契約書をレビューしてくれるサービスも登場しています。もっとも,人工知能による翻訳は,例えば,外国語の契約書に何が書いてあるかを大まかに理解するような場面では非常に有益ですが,日本国内の契約書を人工知能で英訳し,それを正本として使う,といったことは危険です。翻訳の精度が100%ではないことはもちろん,国際的な契約では内容につい
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