3Q1 民事信託ります。 また,いわゆる親亡き後問題も注目されています。親亡き後問題とは,障がいのある子の親が,自身の死後に備えて,子への財産承継や財産の管理活用をいかにして行えばよいかという問題ですが,親の生前の段階であっても親自身が将来認知症になった場合に備えて財産管理をいかに行うべきかとの問題も伴います。 以上のような認知症や親亡き後問題の解決策としては,もとより,成年後見制度や任意後見,財産管理制度のほか,遺言・相続の制度の利用も考えられますが,それぞれに,メリットもデメリットもあります。そうした制度の不備を補い,それにとどまらない高齢者の意思に沿った資産活用や資産承継の手段として,民事信託の有用性が社会に理解されつつあります(後見制度との対比につきQ5参照)。 実際に高齢者が認知症になってしまうと,成年後見制度というセーフティネットはあるものの,遺言を作成できなくなるおそれがあるほか,具体的な資産の活用や利用には大きな制約が生じます。高齢者が生前に自らの意思に沿った資産の利用や活用,資産の承継をするためには,認知症になる前に対策を講じることが必要であり,その方法の一つとして信託の利用が考えられます。 また,信託は,相続や遺言に代わる高齢者の死亡後の財産承継にも利用でき,特に後継ぎ遺贈型の受益者連続信託のように遺言等の他の制度ではなし得ないことを実現できることもあります。 民事信託であれば高齢者の生前の財産の管理活用と死後の財産承継を1つの契約で行うことができることから,上記のような問題をはじめとして,様々な場面における問題解決の方法として有用性が理解され,活用されるようになっています。
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