7_民信Q
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A4Q2 信託の特徴・機能第1章 信託の設定3)信託の機能の分類については,様々な試みがされていますが,ここでは転換機能については四宮和夫教授の分類をもとにしています。 信託にはどのような特徴や機能がありますか。 信託は,委託者が信頼できる第三者(受託者)に財産権を移転し,一定の目的(信託目的)に従い,受託者が受益者のために当該財産(信託財産)を管理・処分する制度です。財産管理制度の一形態ですが,信託財産の所有権等の権利の帰属(所有権,管理処分権は受託者に帰属)と経済的利益の帰属(受益権は受益者に帰属)が分離する点に特徴があります。このような特徴から,信託は転換機能や倒産隔離機能など多様な機能を有することになります。3)1 信託の特徴 信託は,信託法によって認められた財産管理制度です。財産管理制度としては民法にも代理,委任などがありますが,これらの制度は,財産権の帰属権利者がその財産権を留保したまま他人に財産を管理・処分をさせる制度です。これに対し,信託は,委託者が受託者に財産を移転し,受託者に信託目的に従い受益者のために財産を排他的に管理・処分する権限を付与する制度です。これによって財産の権利の帰属と経済的利益の帰属が分離し,代理,委任などとは異なる様々な機能が出てきます。信託法では,委託者と受託者が同一である自己信託が認められ(法3条3号),財産の受託者への移転は必須ではありませんが,自己信託の場合も,財産を委託者の財産から分離するという点では財産の移転と同様な効果があります。 四宮和夫教授は,「信託は,その目的が不法や不能でないかぎり,どのような目的のためにも設定されることが可能である。したがって,信託の事例は無数にありうるわけで,それを制限するものがあるとすれば,それは,法

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