⑴ 金銭への換算可能性⑵ 積極財産性⑶ 移転ないし処分の可能性第2章 信託財産1)この明文化によって,信託法では「事業信託」ができるようになったと指摘されています。70ことができる財産について,明文上の制限はありません。 ただ,信託することができる財産については,①金銭への換算可能性,②積極財産性,③移転ないし処分の可能性,④存在可能性・特定可能性の4つの要件を満たすことが必要と解されています(四宮和夫『信託法』(有斐閣,新版,1989)132頁以下,新井340頁以下)。 信託財産として設定するには,対象となる物の価値を金銭に見積もることができること,すなわち換算可能性の要件を満たすことが必要となります。 不動産,動産,現金,債権,株式,有価証券,知的財産権等多くの財産は,その価値を金銭に見積もることができるので,換算可能性の要件を満たしています。 一方,身分権,人格権等は,金銭に見積もることができませんので,換算可能性の要件を欠き信託財産とすることはできません。また, 身分権,人格権等は,後述の「⑶移転ないし処分の可能性」を欠くという観点からも,信託財産とすることができないともいえます。 通説的見解によれば,信託の対象となる財産は,積極財産に限られ,債務などの消極財産を信託の対象とすることはできないと解されています。 もっとも,信託の設定に当たり,委託者が信託設定前に負担した債務について信託財産を責任財産とする場合には,信託を設定する際に受託者が債務引受けをし,かつ,信託行為により信託財産を当該債務の責任財産とする旨定めることによって実現することが可能です(信託財産責任負担債務。法21条1項3号→Q26参照)。1) 信託財産として設定する財産は,移転若しくはその他の処分を通じ,委託2 各要件について
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