7_民信Q
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71者の財産権から分離することが可能であることが必要とされています。したがって,法律上譲渡が禁止されている年金受給権(国民年金法24条等)や譲渡禁止特約が付されている債権2)などは,受託者への移転が不可能又は困難であるため,原則として,信託財産とすることはできないと解されています。 また,預貯金についても,通常は銀行取引約款等により譲渡禁止特約が付されているため,既存の預貯金債権そのものを受託者に移転することはできないと解されます。そのため,預貯金を信託の対象とする場合には,預貯金の全部又は一部を出金し,信託財産管理用の口座に送金するなど,預貯金債権自体を受託者に移転することのないよう配慮が必要となるでしょう(→Q21参照)。 さらに,譲渡に相手方の承諾が必要となる賃借権や譲渡制限付株式(→Q23参照)3)など,譲渡に一定の条件を要する財産を信託する場合には,事前に相手方の承諾を得ておく必要があります。 なお,委託者自身を受託者として設定する自己信託の場合には,財産の譲渡が不要であることから,譲渡不可能な財産であっても信託を有効に設定できると考える余地があります。4)⑷ 存在可能性・特定可能性 信託財産として設定するためには,存在可能性及び特定可能性があることも必要と解されています。すなわち,信託設定時には存在しない財産又は特定されていない財産であっても,将来に存在し,かつ特定されることが見込まれる場合には,信託財産として設定することが可能であると解されています。Q19 信託することができる財産2)この点,2020年4月施行の民法(債権法)改正により,債権に譲渡禁止特約が付されていても,債権譲渡自体の効力は妨げられないとされることから(改正民466条2項),信託の対象となり得るとの解釈もあります(道垣内35頁)。ただし,預貯金については,上記改正民法466条2項の適用がありませんので(同法466条の5),施行後も信託の対象となり得ないことに変わりがないことには留意が必要です。3)信託財産を譲渡制限付株式とする遺言信託につき,受託者への株式譲渡についての会社の不承認を原因として目的達成不能により信託が終了するものと判断した事例として,東京高判平成28.10.19判時2325─41頁以下参照。4)道垣内34,35頁参照。

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