変則型登記、権利能力なき社団・認可地縁団体等に関する登記手続と法律実務
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第1節 所有者不明土地になる原因は相続登記未了だけか録の表題部に記録される所有者をいう。なお,所有権の登記がされると,表題部所有者に関する登記事項は抹消される。)」と説明している。 また,自由民主党政務調査会の平成30年5月24日発表の「所有者不明土地等に関する特命委員会 とりまとめ」によると「歴史的経緯により表題部所有者の氏名・住所が正常に記載されていない不動産登記」(3頁)と説明している。 このように,色々な説明があるが,どのような登記を指し示すかが,概ね固まりだしたようである。そして,いわゆる『変則型登記』に関しては,令和元年5月17日に「表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律」(令和元年法律第15号)が成立している。46 東京財団の論文には,相続登記未了地以外も記載されている 前記の吉原祥子氏が研究員である公益財団法人東京財団では,平成26年に日本の土地問題に関する政策研究論文「国土の不明化・死蔵化の危機」を発表している。この論文は,吉原祥子氏等が中心になり行った研究報告であり,「所有者不明土地」の原因として相続登記未了を挙げている。 その研究報告には,山林における大きな問題として「入会林野」も取りあげている。しかし,「入会林野」については『私有林とは別物で「権利関係が複雑になってしまった共有の里山」の一形態』(12頁)として,個人の相続未登記の土地とは別物の共有林野としてとらえている。 研究論文の要点(6頁)として,「今後,相続を機に登記放棄される可能性のある個人保有山林は約170万ヘクタールに上ると推定される」と同じように「入会林野に100万ヘクタール以上,耕作放棄地40万ヘクタールを合算すると,管理放棄,権利放置される土地は今後30年内におよそ300万ヘクタール以上にまで増えるおそれがある。」と記載している。そのため,相続未登記の土地と同じように所有者がはっきりしない膨大な入会林野が存在することも記載している。

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