変則型登記、権利能力なき社団・認可地縁団体等に関する登記手続と法律実務
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第1節 所有者不明土地になる原因は相続登記未了だけか6合」,「入会団体」などは,民法上の権利能力でいうと「権利能力なき社団」に分類される団体である。 前記の東京財団の論文で指摘した個人所有の土地と区別されている「入会林野」も基本的には「権利能力なき社団」である「入会団体」が所有する不動産である。 なお,「入会団体」については,通常広義の「権利能力なき社団」に含まれると説明されたり,大部分は,「代表者が定められていない権利能力なき社団」と説明される場合が多いが,具体的な入会団体によっては,「権利能力なき社団」に該当しないものもあるといわれている。そのため,「権利能力なき社団」と「入会団体」は別物と説明する方もいるが,ここでは「入会団体」も「権利能力なき社団」に含まれるとして説明しておく。8 「権利能力なき団体」の登記では,相続登記をしないのが原則 前項で述べたように,不動産が「権利能力なき社団」の所有である場合,代表者1名の住所・氏名,あるいは構成員全員の住所・氏名で共有として登記するのが原則であり,純粋に個人が不動産を所有する形を登記簿に表すのと登記簿上は区別がつかない。 しかし,「権利能力なき社団」所有の不動産では,本書第3編以降で解説しているように特別な登記方法もある。「権利能力なき社団」の代表者や登記の名義に記載されている者が死亡した場合,基本的に,名義人の相続登記をすることは登記制度上許されていない。 その法則があるにもかかわらず,「権利能力なき社団」所有の不動産であっても,個人所有と勘違いされ相続登記が行われることが現実には多く見受けられる。また,「権利能力なき社団」の所有と理解していても,間違って相続登記が行われることもしばしば見受けられる。 このように,「権利能力なき社団」が所有する不動産の登記は,個人が所有していると勘違いされたり,間違って相続登記が行われたりすることも多く,登記上混乱してしまうことも決して少なくないのが現状であるが,所有者不明土地問題の中ではあまり取り上げられていないようである。

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