変則型登記、権利能力なき社団・認可地縁団体等に関する登記手続と法律実務
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推薦のことばi 空き家・所有者不明土地が社会問題化して久しい。所有者不明土地問題研究会最終報告(平成29年12月)によると,平成28年度の地籍調査(約62万筆)において,不動産登記簿上の住所,氏名からは直ちに所有者の所在が明らかにならなかったいわゆる所有者不明土地の割合は,約20.1パーセントと判明した。さらに,この地籍調査では,これらの土地について,登記名義人の戸籍・住民票等により土地所有者の所在を調査したにもかかわらず最終的に所在不明であった土地は全体の0.41パーセントとなったが,探索には多くの時間と手間が掛かることも検証された。 また,同報告書によれば,現在の不動産登記簿上の所有者不明土地の面積は推計で九州本島の面積(約367万ヘクタール)を上回る約410万ヘクタールに上るとみられるが,今後も死亡者数の増加や相続意識の希薄化等が進行した場合,所有者不明土地は発生し続けると考えられ,2040年には所有者不明土地の面積が約720万ヘクタールまで増加すると見込まれている。 国の動きとしては「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」が令和元年6月1日に全面施行され,登記官が,所有権の登記名義人の死亡後長期間にわたり相続登記がされていない土地について,法定相続人等を探索した上で,職権で,長期間相続登記未了である旨等を登記に付記し,法定相続人等に登記手続を直接促すなどの不動産登記法の特例が設けられた。また,地方公共団体の長等に財産管理人の選任申立権を付与する民法の特例も設けられるとともに,地域福利増進事業の実施のための措置(土地使用権の取得等)も創設された。 そして,「表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律」が令和元年5月17日に成立,同月24日に公布され,表題部所有者不明土地(いわゆる変則型登記)について,登記官に所有者等の探索権限を与えるとともに探索結果を表題部に職権で登記することとし,所有者等特定不能土地については,利害関係人の申立てにより裁判所が選任した管理者による管理,さらに裁判所の許可を得たうえでの売却を可能とした(全面施行は公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日)。推薦のことば

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