変則型登記、権利能力なき社団・認可地縁団体等に関する登記手続と法律実務
7/55

はしがきiii 所有者不明土地が増加していると話題になり,所有者不明土地問題研究会最終報告(平成29年12月)によると,現在の不動産登記簿上の所有者不明土地の面積は九州本島の面積(約367万ヘクタール)を上回るといわれている。 この所有者不明土地が増加した原因につき,「相続登記がされていないため,相続人が膨大になり,所在が不明な相続人もいるため現在の所有者がはっきりしない」とよくいわれている。この原因は,不動産の持ち主が個人であり自然人であるからということが前提になっていると思われる。 しかし,この原因について,実際に不動産の登記を扱うものとしては,現実は少し違うのではないかとの疑問を持たざるを得ない。 不動産の所有者は,通常,個人に限るわけではなく会社をはじめ法人,あるいは法人ではないが団体である「権利能力なき社団」が所有するなど様々なものが存在する。また,何十人もの個人の共有の土地であれば,純粋に個人の共有ではなく団体の所有を表しているといわれている。そうであれば,所有者不明土地に関しても,純粋に自然人である個人が所有するだけでなく,法人や「権利能力なき社団」が所有しているものもあるはずである。 その視点から,登記簿を見ていくと,様々な複雑な登記名義が現実には存在する。例えば,① 登記名義上は多人数の共有状態であるが実際の持主は地縁団体や入会団体である「権利能力なき社団」が所有者である土地,② 「大字霞が関」等の「大字」の後に地域名や集落名などが記録されている「字持地」,③ 表題部に特殊な登記名義が登記されているが甲区の所有権が登記されていないいわゆる「変則型登記」など,様々な複雑な登記名義の不動産が,現実に登記簿には存在し,現在では「所有者不明土地」に該当し,誰が所有者なのか分からない土地も多く存在する。様々な登記名義には,すでに述べたものだけでなく,④ 戦時中に法人化した町内会所有の土地,⑤ 市町村が合併しても依然として旧市町村が所有しているような「財産区」などもあり,登記名義を見ただけでは,誰が所有者なのか分かりにくい登記名義も存在する。また,同じ登記名義であっても所有者はしがき

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る