変則型登記、権利能力なき社団・認可地縁団体等に関する登記手続と法律実務
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はしがきivがいくつか考えられるという複雑なものまで存在する。 国は,所有者不明土地に関して対応策として,「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(平成30年法律第49号)」(通称「所有者不明土地法」)も平成30年6月6日に成立しているが,必ずしも上記で述べた複雑な登記名義の土地に対応しているのかどうかはっきりしないようにも思われる。 ただ,上記の③で述べた表題部にのみ複雑な登記名義がある「変則型登記」に関しては「表題部所有者不明土地」と呼び,「表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律」が令和元年5月24日に公布され,対応しようとしている。 「表題部所有者不明土地」である「変則型登記」にも,様々な種類のものがあり,代表的なものを挙げると,㋐ 「A外7名」などと記録され,「A」の住所並びに他の共有者の氏名及び住所が登記記録上,記載されていない,いわゆる「記名共有地」,㋑ 「共有惣代山田太郎」などと記載され,団体が所有していることを示している「共有惣代地」,㋒ 住所が記録されておらず,「大字霞が関」等の大字名や集落名などの名義が記録されている,いわゆる「字持地」,㋓ 氏名が記載されているものの,住所が記録されていない,いわゆる「氏名のみの登記名義」など様々なものが存在する。 いままで述べたような複雑な登記名義に関しては,そもそも所有者が誰なのかをはじめ,なぜ,そのような登記名義があるのかも不思議である。 その点で,それぞれの複雑な登記名義が何なのかを調査してみると,日本における様々な歴史により,そのような複雑な登記名義が生まれたことがみえてくる。 それは,Ⓐ 江戸時代から現在まで共同して暮らしてきた地域社会の移り変わり,Ⓑ 明治時代から現在まで続く市町村等行政的区切りの合併の流れ,Ⓒ 明治時代から始まった土地に関する税金を納める者を把握するための土地台帳等の名簿,Ⓓ 明治時代に始まった登記制度の移り変わり,等により様々な複雑な登記名義が出来上がったことも分かってくる。 本書では,個人名義ではあるが,実際には個人名義ではない「権利能力なき社団」の登記に関して説明をした後に,複雑な登記名義が出来上がっ

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