ライ特
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14ス」又は単に「ライセンス」といい,その契約を「知的財産ライセンス契約」又は単に「ライセンス契約」と表記する。本書の主題である産業技術ライセンス契約の具体的条項の検討は次章に譲り,本章では,より大きな枠組みである知的財産ライセンスについて,その理解のための基本的な視点をいくつか述べておく。知的財産基本法の定義によれば,「知的財産」(intellectual property)とは,特定の思想,表現,表示及び情報である無体物(情報財)であり,「知的財産権」(intellectual property right)とは,かかる情報財を客体とする権利である。分かりやすい例で言えば,「発明」,すなわち「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」(特許法2条1項)は「知的財産」であり,これに対する権利である「特許権」は「知的財産権」である。有体物で言えば,「不動産」が権利の客体であり,「所有権」や「地上権」などの物権が権利であるのと同様の概念区分である。このように「知的財産」と「知的財産権」とは権利の客体と権利自体ということで異なる概念であるが,実務上は,これらの言葉はそれほど厳密に区別されて用いられておらず,「知的財産」という言葉を権利の客体ではなく,権利(知的財産権)を意味する言葉として用いられる例もしばしば見られる。権利とその客体のいずれを意味しているのかは,大抵文脈から判断できるので,目くじらを立てて厳密な使い分けをする必要はないが,権利とその客体とが概念として異なることは意識しておくべきであろう。ちなみに,「特許」という言葉と「特許権」という言葉も,厳密に考えると意味は異なり,本来,前者は国(特許庁)が要件を満たす発明に対して特許権を付与する行為(行政行為)を意味し,後者はかかる行政行為によって発生した権利を意味する。しかしながら,実務上は,権利を意味するに当たって「特許権」と言わず,単に「特許」という言葉を用いることが多い。本書においてもこの点厳密な使い分けをしていないことをご容赦いただきたい。「知的財産」と「知的財産権」の違い

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