ライ特
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知的財産基本法における定義から明らかなように,知的財産又は知的財産権という概念の中には,多様な財産又は権利が含まれる。それ故,一口に知的財産ライセンスといっても,対象となる知的財産によって,その法的性質や経済的機能は一様でない。知的財産基本法に定義される「知的財産権」のうち,「特許権,実用新案権,育成者権,意匠権,著作権,商標権その他の知的財産に関して法令により定められた権利」は,その権利範囲において,対象となる当該知的財産(発明,考案,植物の新品種,意匠,著作物,商標等)の他人による実施(あるいは使用又は利用)を排除する物権的効力を有する。特許権について見れば,特許法68条本文が「特許権者は,業として特許発明の実施をする権利を専有する。」として,この理を明示的に規定している。以下,本書では,かかる物権的効力を有する知的財産権を「物権的知的財産権」と呼ぶこととする。なお,知的財産権のうち,特許庁の所管に係る,特許権,実用新案権,意匠権及び商標権の四つを「産業財産権」というが,これらの権利は全て物権的知的財産権に該当する。他方,知的財産基本法に定義される「知的財産権」のうち,「その他の知的財産に関して法令により定められた……法律上保護される利益に係る権1利」,例えば不正競争防止法や不法行為法によって保護される営業秘密又は2限定提供データに係る権利は,物権的権利ではない。例えば,営業秘密の典5第2節 物権的・非物権的知的財産権とライセンスの法的性質1 「秘密として管理されている生産方法,販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって,公然と知られていないもの」(不正競争防止法2条6項)。2 「業として特定の者に提供する情報として電磁的方法(電子的方法,磁気的方法その他人の知覚によっては認識することができない方法をいう。次項において同じ。)により相当量蓄積され,及び管理されている技術上又は営業上の情報(秘密として管理されている第2節物権的・非物権的知的財産権とライセンスの法的性質

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