は,A社はB社によるその使用行為について救済を求めることはできない。⒞ 他方,当該ネジ製品の製造方法が特許要件を満たすものであり,A社がこれについて特許出願し,特許を取得すれば,出願から20年間,A社は当該製造方法について特許権という排他権を有することになるから,その間にB社が同じ製造方法を使用すれば,たとえB社がA社8とは関係なくたまたま同じ製造方法を開発したとしても,先使用権が成立しない限り,A社は特許権の効力として,B社に対し差止めや損害賠償等を請求することができる。すなわち,上記設例⒜において,A社のネジ製品の寸法の情報は,営業秘密に該当しないから,産業財産権によって保護されていない限り,基本的に誰でも使用することのできるパブリックドメインに帰すのであり,競業他社であるB社もこれを使用することを妨げられない。これに対して,設例⒝においては,当該ネジ製品の製造に関してA社が営業秘密を保有している場合,A社は当該情報について不正競争防止法・不法行為法上の保護を受ける権利という非物権的知的財産権を有し,これらの法に基づいてB社の不正な行為について救済を求めることができる。もっとも,この場合,A社は当該情報について物権的知的財産権を有するわけではないから,B社による当該情報に使用行為が正当なものであれば,これを排除することはできない。他方,設例⒞においては,A社が当該情報について特許権を取得すれば,B社に先使用権が成立しない限り,B社によるその使用行為を排除することができる。このように,同じ知的財産権であっても,物権的知的財産権と非物権的知的財産権とでは,その効力と権利保護の仕組みが異なるのであり,一口に知的財産権のライセンスと言っても,物権的知的財産権のライセンスと非物権的知的財産権のライセンスでは法的性質が異なる。すなわち,物権的知的財88 特許法79条。
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