ライ特
21/36

9産権のライセンス,典型的には特許権のライセンスの本質が,物権的権利の行使(差止請求権,損害賠償請求権,不当利得返還請求権等の行使)をさせないという不作為請求権であるのに対し,非物権的知的財産権のライセンス,典型的には営業秘密であるノウハウのライセンスの本質は,秘密である技術情報の開示を受け,秘密保持義務等,契約上の一定の条件の下でそれを使用する権利であるといえる。さらに,物権的知的財産権のライセンスは当該知的財産権の不作為請求権であることから,その対象となる知的財産権の権利内容・効力によってライセンスの効力は異なることになる。例えば,特許権と著作権はいずれも物権的効力を有する知的財産権であるが,それぞれの権利内容・効力は異なるか10ら,その不作為請求権であるライセンスは,許諾対象の権利の違いに照らして異なることになる。要するに,物権的知的財産権のライセンスの本質は,当該知的財産権の不作為請求権であるから,その権利内容は,許諾対象である知的財産権の投影的性格を有することになるのである。9第2節 物権的・非物権的知的財産権とライセンスの法的性質9 ここでは,我が国の特許法にいう通常実施権を念頭に置いている。我が国の特許法にいう専用実施権はそれ自体物権的権利であり,ここにいう典型的なライセンスではない。10 特許権と著作権は,いずれも侵害行為に対する救済として,差止請求,損害賠償請求,不当利得返還請求等の救済が認められるという点では共通しているが,それぞれの効力の違いに応じて侵害を構成する行為の範囲が異なり,また損害賠償請求についてみれば,特許権の場合は侵害者の過失が推定される(特許法103条)のに対し,著作権の場合,侵害者の過失は推定されないという差異がある。また特許権と著作権では存続期間も大きく異なる。

元のページ  ../index.html#21

このブックを見る