家事裁判から戸籍まで【親子・認知 編】
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第1 家事事件1 家事事件の特色第1章3第1 家事事件ア 家事紛争 一般の民事事件は,取引の相手方や交通事故のように偶然出くわした他人との紛争であるのに比し,家事事件は,家族若しくは家族であった者又はその関係者間という,長年の交流のある者又はその関係を断ち切ることが困難な関係にある者の間の紛争であるということができます。その紛争が家族間の遙か前からの出来事に起因している場合があったり,財産関係事件におけるようなそろばん勘定では解決が困難な心情的な確執が当事者間にある場合もあります。さらには,紛争が終了した後においても,親族間や関係者を通じて人間関係が継続する場合もあります。例えば,離婚がされると夫婦は他人のように思われますが,夫婦間に子があるときは,当該子の養育等を巡って,もとの夫婦は一定の関係を継続せざるを得ません。家事事件にはこのような特色があるので,一般に第三者に知られたくない事項を調査しなければ解決しない場合があったり,過去の紛争の解決とともに将来の関係をも調整しておくべき必要性がある場合もあります。それ故に,家事事件については,当事者の権利義務の確定という形式張った判断ではなく,裁判所等の裁量により,より情宜に叶った解決をすることが望ましいということができます。 また,特別養子縁組の成立や後見開始の審判等,身分関係の成立を当事者の意思に任せるのではなく,家庭裁判所が,身分行為の成立や社会的弱者の保護のために国家の機関として後見的に関与すべき事項も存在します。 このように,家事事件については,公開の法廷で厳格な証拠調べを行った上で権利義務の存否を客観的に判断する訴訟の形式によって,これを解決することが相当ではない場合もあります。そこで,家事事件について,家事事件手続等の概要

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