家事裁判から戸籍まで【親子・認知 編】
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2 家事法の制定4第1章 家事事件手続等の概要非公開により,かつ,柔軟な解決を目指して裁判をするため,家事事件手続法(平成23年法律第52号,以下「家事法」という。)が制定されています。イ 民法と家事法 家族法の分野は,戦後,幾たびか改正されてきましたが,これらの改正は,まず,両性の平等を実質的に確保するための妻の権利の確保,次いで,家庭内の弱者である子どもの権利確保,さらには,高齢者が充実した人生を送れるための手段の確立を目指してきたということができます。そして,家族法が実体法として定める権利は,裁判所による手続を通じて実現されますが,その手続を定めるのが家事法ということができます。なお,家事事件に関する裁判等の実現のためには,面会交流のように,任意の履行を待つべきであって,間接強制等の強制執行が最終的な手段となるべきものや,月々の養育費の支払いのように,強制執行のために要する費用や時間を考えると民事執行法に定める強制執行が現実的ではないものがあります。そこで,家庭裁判所が義務者に対して履行を勧告する制度も設けられていますが,その概要は,後記3を参照願います。ウ 紛争解決手段 家事法では,家事に関する紛争については,まず,調停に付するものとしています。当事者間の合意が紛争解決の基調にあれば,そこで約束された事項については任意の履行を期待することができますし,将来における関係も調整することができるからです。調停が成立しない場合は,当事者の申立てにより離婚等の訴訟事件又は遺産分割等の家事審判と手続が進行します。なお,家庭裁判所が後見作用を行うべき事件については,調停に付されることなく,直ちに家事審判が行われます。 このように,家事に関する紛争については,家事調停,家事審判,人事訴訟の3つの手段が存在します。これらの手続の概要については,第2以下において説明します。ア 家事審判法から家事法へ 家事事件については,戦後,これを扱うべき裁判所として家庭裁判所が

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