家事裁判から戸籍まで【親子・認知 編】
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5第1 家事事件設立されるとともに,家事審判法が制定され,同法に基づき,家事審判や家事調停が行われてきました。しかし,条文数が少なく,本来法律事項として定めるのが相当と思われる事項についても,最高裁判所が定めた規則である家事審判規則により補充されていたり,当事者に対する手続的保障に欠けるところがありました。そこで,同法を全面改正するものとして家事法が立法され,平成25年1月1日から施行されています。これに伴い,家事審判法は廃止されました。なお,家事法は,明文の規定こそ設けていないものの,家事審判法1条が「個人の尊厳と両性の本質的平等を基本として,家庭の平和と健全な親族共同生活の維持を図ることを目的とする」と規定していた精神をそのまま引き継いでいます。イ 両者の比較 家事法と家事審判法とを比較しますと,家事法は,家事事件の手続を国民にとって分かり易く利用し易いものとするためのシステムが構築されています。まず,当事者の手続的保障,すなわち,当事者が裁判の基礎となる証拠や資料を十分に知ることができたり,裁判所に資料を十分に提出することもできるようにされています。このために,参加人の権限を明確にしたり,当事者による記録の閲覧・謄写を原則的に認めるものとしたり,電話会議システム等による審理を行ったり,調停条項の書面による受諾により調停を成立させる範囲を拡大する等のことを行っています。 次に,裁判管轄,必要的陳述聴取,即時抗告といった,当事者の権利義務に重大な影響を及ぼす事項や家事事件の大綱については,法律で規定し,それ以外の細目的事項を規則に委ねるものとしています。また,家事審判法では,非訟事件手続法第1編の規定を準用していたため,これも参照しなければならない場合がありましたが,家事法は,国民の便利のため,このような包括的な準用をやめ,自己完結的に制定されています。すなわち,家事法のみを見れば,基本的に他の法律を参照しなくても,手続の全体が分かる仕組みとなっています。 なお,最高裁判所の規則に関しては,従前は,民法に関する事項については家事審判規則により,戸籍法等民法以外の法律に関する事項については特別家事審判規則により,それぞれ定めていましたが,家事法において

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