家事裁判から戸籍まで【親子・認知 編】
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7第1 家事事件4 家庭裁判所の陣容 家庭裁判所では,紛争解決のため,地方裁判所にあるような裁判官や裁判所書記官以外に,家庭裁判所調査官等の人員が配置されています。なお,家事審判法では,家庭裁判所の裁判官のことを「審判官」と称していましたが,家事法では,他の裁判手続と同様に,「裁判官」と称しています。ができ,このために必要があるときは,事件の関係人の家庭環境等の調整のために社会福祉機関との連絡等を行ったり,銀行等に対して報告を求めたりすることができます。また,②審判又は調停で定められた金銭の支払いその他財産上の給付を目的とする義務の履行を怠った者がある場合において,相当と認めるときは,権利者の申立てにより,義務者に対し,相当の期限を定めてその義務の履行をなすべきことを命ずることができます。さらには,義務者が正当な事由なくこれに従わないときは,10万円以下の過料に処することができる(同法289条・290条)ものとしています。 第5編「罰則」では,人の秘密を漏らす罪や評議の秘密を漏らす罪等を定め,秘密の確保のための手当をしています。ア 家庭裁判所調査官 家庭裁判所調査官(以下「調査官」という。)は,家事紛争に関して,法律のみならず,心理学等の専門的知識を駆使して,事案の解明やあるべき解決方法を提案することを職務とします。例えば,夫婦間の紛争において,父母のうち,いずれが親権者となるのが相当か,親権者とならない親と子との面接はどのようにするのが相当かを判断するため,それぞれの生活の本拠を訪れて事実を調査したり,科学的方法により子の深層心理を分析します。また,家庭裁判所が後見作用として審判を行うべきときは,審判の前提となる事実調査も行います。例えば,成年後見審判の申立てがあった場合,事件本人等の状況を調査します。遺産分割においても,当事者の心理的対立が激しいときに,その調整を行う等の場面に活躍しています。かつては,婚姻費用や子の養育費に関する調査が相当のウエイトを占めていましたが,夫婦それぞれの収入に基づく算定基準が確立したため,現在では,家事部配属の調査官の業務は,上記の調査等が主流となっています。

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