家事裁判から戸籍まで【親子・認知 編】
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第1 嫡出否認の裁判1 解 説第1章99第1 嫡出否認の裁判⑴ 嫡出否認 民法上,母と子の法律上の親子関係は子の分娩という事実により成立するものと解されています(最判昭和37・4・27民集16・7・1247)。他方,父については,母がいかなる者との間で子を分娩したかは必ずしも明らかではないので,民法772条は,次のような2段の推定をしています。まず,「妻が婚姻中に懐胎した子は,夫の子と推定」し(同条1項),次いで,ここにいう「婚姻中に懐胎した」かどうかは必ずしも明らかではないので,「婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は,婚姻中に懐胎したものと推定」しています。このように,婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は,婚姻中の夫婦間に出生した子(嫡出子)と推定しています。他方,母が婚姻外で分娩した子については,このような法律上の推定はなく,父が任意に認知した場合又は裁判上認知された場合に初めて法律上の親子関係が成立するものとしています(民779条・787条)。 上記の推定を嫡出推定と称していますが,婚姻中に妻が他の男性と関係をもって子を分娩することもあり,当該推定が真実に合致しない場合があります。このような場合にまで夫と当該子の間の法律上の親子関係を存続させることは相当ではありませんが,他方,夫が当該子を自分の子と信じて過ごし,子も一定年齢に達し,夫を自分の父親と信じるようになることもあり,いつまでもその推定を覆し得るものとするのは相当ではありません。また,家庭内の秘事に属することを第三者がとやかくいうのも問題です。そこで,民法774条は「第772条の場合において,夫は,子が嫡出であ親子関係事件

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