家事裁判から戸籍まで【親子・認知 編】
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iはしがき 数年前,当時日本加除出版編集部の課長であった髙山さんから,家事事件の裁判に関する本は沢山刊行されているし,戸籍に関する本も同様であるが,その両者を一体化した書籍は未だ刊行されていないので,そのような本を作成すればどうであろうか,と提案がなされた。この提案について,南は極めて有益な書物ができあがるであろうと諸手を挙げて賛成した。 離婚や親子関係不存在確認の裁判等,家事事件に関する裁判が確定した場合,身分関係はその確定により変動するが,その結果を,戸籍に反映させるためにはどのような手続が必要かを承知していない法律専門家が存在する。他方,市町村で戸籍を担当する方々の中には,戸籍訂正申請等に添付される裁判の謄本につき,どのように申し立てればそのような裁判の謄本を得られるかを承知していない方も存在する。そして,それぞれの方が,戸籍の書物や裁判に関する書物を紐解いても,問題の事案がどの類型に当てはまるのかが分からなければ,正確な情報を掴むことは困難である。本書は,その橋渡しを目指したものである。 財産関係の裁判でいえば,訴状の書き方と強制執行の申立方法を一体的に説明した書物を刊行するのと同様の試みであるが,財産関係については,そのような書物を見受けることが少ない。これは,例えば,金銭請求の裁判には多くの類型があるし,強制執行の方法にも,動産や不動産の競売とか,債権差押え等多くの類型があり,かつ,両者があまり関連性を持たないからである。他方,家事事件に関する裁判(調停,審判,人事訴訟)の場合,その裁判の類型ごとに戸籍訂正等の手続が決まっていて,これを一体的に説明することが可能である。例えば,法的に同じような効果を持つ嫡出子否認の裁判と親子関係不存在確認の裁判では,その確定による戸籍の手続が異なり,前者の場合は,出生届による出生事項をそのままにし,それを前提に,嫡出子否認に関する戸籍の記載をするが,後者の場合は,出生届が誤りであったことを前提とする戸籍訂正を行う。このようなことを知った上で裁判を提起すると,結論を見据えた裁判をすることが可能となる。はしがき

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