家事裁判から戸籍まで【親子・認知 編】
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100第1章 親子関係事件ることを否認することができる」と規定して,嫡出の否認をすることができる者を夫に限定し,かつ,777条は,「嫡出否認の訴えは,夫が子の出生を知った時から1年以内に提起しなければならない」と規定して,嫡出の否認をすることができる期間を限定しています。そして,775条前段で「前条の規定による否認権は,子又は親権を行う母に対する嫡出否認の訴えによって行う」と規定して,嫡出の否認は,裁判によることを要するものとしています。なお,同条後段は「親権を行う母がないときは,家庭裁判所は,特別代理人を選任しなければならない」とし,また,778条は「夫が成年被後見人であるときは,前条の期間は,後見開始の審判の取消しがあった後夫が子の出生を知った時から起算する」と,それぞれ,特殊な場合の特例を定めています。⑵ 推定されない嫡出子 ⑴で説明したとおり,婚姻中に出生した場合であっても,婚姻の成立の日から200日以内に出生した子は,嫡出子としては推定されません。しかし,当該子を嫡出でない子とし,夫の認知があって初めて夫との間に法律上の親子関係を認めるというのも問題です。そこで,内縁中に懐胎し,適法に婚姻をした後に出生した子は,婚姻の届出と出生との間に200日が経過しなくても,出生と同時に当然に嫡出子たる身分を取得するものと解されています(大連判昭和15・1・23民集19・1・54)。また,戸籍の実務では,同判決の趣旨により,婚姻成立の日から200日以内に出生した子については,父母の内縁関係が先行していなくても,父母の嫡出子としています(昭和15・4・8民事甲432号通達)。 これとは逆に,夫が長期間刑務所に服役中に妻が懐胎した場合や,夫のみが長期間外国滞在中又は夫婦が長期間完全に別居中等に妻が懐胎した場合等,妻が夫の子を懐胎し得ない事情がある場合には,嫡出推定の基礎がないので,民法772条は適用されないものと解されています(最判昭和44・5・29民集23・6・1064)。 これらの場合は,嫡出性の推定はありませんが,子は,婚姻中に出生していることから,出生と同時に嫡出子たる身分を取得しており,講学上「推定されない嫡出子」と言われています。この推定されない嫡出子につ

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