家事裁判から戸籍まで【親子・認知 編】
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第1 認知の裁判1 認知の制度第2章307⑴ 父子関係の成立 民法779条は「嫡出でない子は,その父又は母がこれを認知することができる。」と規定し,嫡出でない子と血縁上の親との法律上の親子関係は認知により成立することを定めています。もっとも,母と子の法律上の親子関係は子の分娩という事実により成立するものと解されており(最判昭和37・4・27民集16・7・1247),同条のうち,母子に関する部分は死文化しており,同条は,嫡出でない子と父親との法律上の親子関係の成立についてのみ規定しているものと解されています。なお,嫡出子と父との親子関係については,民法772条が,婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は,婚姻中の夫婦間に出生した子(嫡出子)と推定すると規定しており,この推定規定に基づき,その成立を認めています。さらに,婚姻の成立の日から200日以内に出生した子については,父が認知しなくても,出生と同時に当然に嫡出子たる身分を取得するものと解されています(大連判昭和15・1・23民集19・1・54)。⑵ 認知の種類ア 任意認知と裁判認知 民法は,781条において,認知は,戸籍法の定めるところにより届け出ることや,遺言により行うことができることを定めています。また,父が任意に認知しないことがあるので,787条において,子,その直系卑属又はこれらの法定代理人は,認知の訴えを提起することができることを定めています。すなわち,認知には,父の意思表示による任意認知と裁判により認知をする裁判認知(強制認知ともいいます。)とがあります。第1 認知の裁判認 知

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