家事裁判から戸籍まで【親子・認知 編】
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2 認知を求める裁判308第2章 認 知ところで,任意認知の場合,その届出に当たり父と子とが血縁関係にあることの証明書の添付を求めていないことから,血縁上の父でない者から認知の届出がされることがあります。また,成年者を認知する場合,被認知者の同意が必要ですが(民782条),詐欺や強迫により同意がされて,認知の届出がされることがあります。そこで,認知の無効や取消しの裁判も問題となりますが,これらの裁判については第2以下で説明することとして,ここでは,認知を求める裁判について説明します。イ 死後認知 子又は父の死亡後でも認知が問題となることがあります。死後認知の問題であり,まず,子の死亡後ですが,民法783条2項では,父は子の死亡後でも子に直系卑属がある場合に限り認知をすることができることが規定されています。次に,父の死亡後は,父自らが認知をすることができないので,裁判による認知のみが可能です。すなわち,父の死亡後3年以内であれば,子又はその法定代理人は,認知請求をすることができ(民787条),この場合は,検察官を相手として人事訴訟を提起することを要します(人訴12条3項)。なお,子の死亡後については,子の直系卑属が認知を請求することができます(民787条。同条は,子の直系卑属も認知請求権者である旨を規定し,一見すると子の生存中も認知請求できそうですが,民783条2項が,父は子の死亡後でも子に直系卑属がある場合に限り認知をすることができることが規定されていて,その権衡上,子の死亡後に限り,子の直系卑属は認知請求できるものと解されています。)。ウ 胎児認知 父は,母の承諾を得て胎児を認知することができますが(民783条1項),母は,胎児の法定代理人ではないので,父に対して認知を訴求することはできません。もっとも2⑵ウで説明するように,母は,調停の申立てをすることができます。⑴ 調停の申立てと訴えの提起 民法787条は,「子,その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は,認知

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