家事裁判から戸籍まで【親子・認知 編】
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309第1 認知の裁判の訴えを提起することができる。ただし,父又は母の死亡の日から3年を経過したときは,この限りでない。」と規定し,子らは子の実親に対して認知をするように裁判を提起することができることを定めています。そして,この認知の訴えは,形成の訴えと解されており(最判昭和29・4・30民集8・4・861),裁判の確定により父と子の法律上の親子関係が成立することになります。もっとも,認知の効力について民法784条は,「認知は,出生の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし,第三者が既に取得した権利を害することはできない。」と規定していて,遡及効を認めており,同条は,裁判認知の場合にも適用されます。 認知の裁判についても調停前置がとられていて,まず調停を申し立てることを要しますが,調停により決着をつけることはできません。当事者間に事実関係に争いがないこと等,第1編第1章第3の3で説明した要件の下に,家事法277条に規定する合意に相当する審判をすることにより事件を解決させます。なお,父が認知の届出を速やかに行うとの条項を定める調停は,父の任意の履行を待つことになり,相当ではありません。父が審判を望まない場合は,調停の期日間に認知の届出を行い,申立人がその点を確認した後に,調停の申立てを取り下げる等の方法が考えられます。 調停の申立人又は認知の訴えの原告は,子,その直系卑属又はこれらの者の法定代理人であり,その相手方は父です。子は,行為能力がなくても意思能力があれば法定代理人の同意なくして独立して裁判を提起することができます(人訴42条1項・13条)。母が父との間で認知しない約束のもと,生活費の援助を受けていても同様です。子が認知を望んでいなかった場合であっても,子の死亡後は,その直系卑属は認知の裁判を提起することができます。なお,法定代理人は,代理人の資格で裁判を提起するというのが通説・判例であり,子が意思能力を有するときでも,法定代理人は,子を代理して裁判を提起することができます(最判昭和43・8・27民集22・8・1733)。 認知請求権は,それが身分上の権利であること,親子関係が単に経済的な問題にとどまらないこと等の理由により,同請求権は放棄することができないものと解されています(最判昭和37・4・10民集16・4・693)。なお,

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