無効理由があれば,請求は棄却されてしまいます。ですから,X社は,無効理由のないことを予め検討しておかなくてはなりません。この検討を無効の抗弁の検討といいます。 特許の無効理由は,特許法123条に規定されています。よく使われる無効理由は,「新規性がない」(特許法29条1項違反),「進歩性がない」(同条2項違反),「記載要件違反」(特許法36条の実施可能性要件(4項1号)違反,サポート要件(6項1号)違反,明確性要件(6項2号)違反等),などです。第1 特許権侵害訴訟のリスク5(3)回避可能性 さらに,X社特許権に係る特許発明がY社製品(方法)によって実施されており,かつ,有効な特許権だとしても,Y社が簡単に実施を回避できるのであれば,訴訟を提起しても,その効果は小さいものに過ぎません(過去分の損害賠償請求が残るだけで,差止請求ができないからです。)。この回避可能性は,物理的な回避可能性(特許権の構成要件の実施を回避して同等の物を作る(あるいは方法を実施する)ことが物理的にできるのか。)のほか,ビジネス的な回避可能性(特許権の構成要件の実施を回避して同等な物を作った(あるいは方法を実施した)としても販売等が実際にできるのか。)等もあります。後者については,たとえば,行政庁の許認可(あるいは顧客による認定手続)に係る製品(方法)については,許認可(あるいは認定手続)を再度取得しなければならず,ビジネス的には不可能(あるいは実現困難)な場合などがあります。(4)反対提訴 加えて,Y社がX社に対して反対提訴することも考えられます(そのような事態が想定できる場合のことですが。)。たとえば,Y社特許権とX社製品(方法)とを対比して,Y社特許権に係る特許発明が実施されているか,Y社特許に無効原因はあるか,回避可能性はどうか,なども検討しなくてはならないのです。この検討の要領は,以上に述べたX社特許権に係
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