には,特許権者は侵害行為者に対して,侵害行為の差止請求(特許法100条),損害賠償請求(民法709条,特許法102条),不当利得返還請求(民法703条),又は信用回復措置請求(特許法106条)をすることができます。第2 特許権と特許権の効力7(2)差止請求権 民法の不法行為では金銭賠償が原則であり(民法722条1項),特別の場合に名誉毀損における原状回復が認められています(民法723条)が,民法の特別法である特許法が規定する特許権は,差止請求が原則として認められる物権的な権利です。 差止請求は特許法100条に規定されていますが,特許法100条は,1項で侵害の停止又は予防の請求権(いわゆる差止請求権)を規定し,2項で侵害行為を組成した物(物を生産する方法の特許発明にあっては,侵害行為により生じた物を含みます。)の廃棄,侵害行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な行為の請求権(附帯請求権としての廃棄・除却請求権等)を規定しています。2項の「侵害の予防に必要な行為」は,特許発明の内容,現に行われ又は将来行われるおそれがある侵害行為の態様,特許権者が行使する差止請求権の具体的内容等に照らし,差止請求権の行使を実効あらしめるものであって,かつ,差止請求権の実現のために必要な範囲内のものであることを要するとされています(最高裁平成11年7月16日判決・民集53巻6号957頁(生理活性物質測定法事件))。 なお,特許法68条ただし書によって,たとえば,特許権について関東地区限定の専用実施権が設定された場合は,その関東地区において,特許権者は自ら特許発明を実施できなくなります。また,特許権の存続期間のうちの一定期間について専用実施権を設定した場合は,その期間において,特許権者は自ら特許発明を実施できなくなります。ただし,判例は,特許権者はその特許権について専用実施権を設定したときであっても,当該特許権に基づく差止請求権を行使することができるとしています(最高裁平成17年6月17日判決・民集59巻5号1074頁(生体高分子-リガンド分子の安定複合
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