特解
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権者の生産能力等を超えるとして賠償が否定されていた部分について,侵害者にライセンスしたとみなして,実施料相当額の損害賠償を請求できることとされ(特許法102条1項2号),また,②実施料相当額による損害賠償額の算定に当たり,特許権侵害があったことを前提として交渉した場合に決まるであろう額を考慮できる旨が明記されました(同条4項)。第2 特許権と特許権の効力9(4)補償金請求権 これは,出願人が,出願公開後,特許権の設定の登録前に業としてその発明を実施した者に対し,実施料相当額の補償金の支払を請求できる権利です。ただし,この請求権は,特許権の設定の登録があった後でなければ,行使することができません。 特許出願は,出願の日から1年6か月経過すると,出願公開されます(特許法64条1項)。ここで,ライバル企業などが公開公報を見ると,開示された発明を模倣して実施できてしまうことが多いと考えられますが,差止請求や損害賠償請求が認められるのは,特許権が効力を生じる設定登録(特許法66条1項)以降で,この時までは権利行使はできません。 そこで特許法は,出願公開された発明の特許出願人を保護するため,出願公開後にその発明を業として実施した者に補償金請求ができるとしています(特許法65条)。この補償金を請求するためには,①出願公開後特許出願に係る発明の内容を記載した書面を提示し警告したこと(警告),又は,②その発明を実施した者が出願公開された特許出願に係る発明であることを知っていたこと(悪意)が必要で,請求できる補償金の額は,その発明が特許発明である場合にその実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額とされています(同条1項)。他方,出願公開されても登録にまで至らないものも少なくないので,この補償金請求権を行使できるのは,特許権の登録後に限られます(同条2項)。国際出願にも同様の制度があります(特許法184条の10)。 なお,出願公開前に出願に係る発明が第三者により実施されている等,出願から1年6か月後の公開まで補償金請求権が発生しないことが不合理な場

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