日米親
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。34)我妻榮『改正親族・相続法解説』107頁(日本評論社,1949年)。5)梶村太市ほか編著『離婚後の共同親権とは何か』(日本評論社,2019年)。第Ⅱ部は,日本法の研究である。第1章では,子どもの監護紛争に関して総合的に検討を行った。親権または監護権をめぐって父母間で争われる子どもの監護紛争の手続と判断基準,および執行手続も含め,立法,学説,判例をまとめて現代の到達点を明らかにしたつもりである。第2章は,アメリカの親の権利議論から示唆を得て,日本法において,国家と親との関係から親の権利に関して考察している。そして第3章においては,親権概念を考察するために,親権に含まれない親の固有の権利義務について検討した。離婚後の共同親権が議論されていることを踏まえて,親権の基本に立ち返り考察したものである。今日の親権法を考える上で,離婚後の共同親権の議論は避けて通れない課題であるが,これは感情的議論となりやすい。わが国では,未婚の父母間の子どもの奪い合いよりも,夫婦の別居,離婚時における子どもをめぐる争いがはるかに多いため,実務では親同士の紛争の程度が,直接子どもに対する権利義務の問題に影響を与えやすい。夫婦間に何らかの原因があり別れるのであるから,平和的解決ばかりが望めるわけではない。したがって現行法は,離婚後に父母が共同で親権を行使することが困難であるとして,離婚後は単4)といわれており,現代でも離婚後の共同親権はうまく機独親権制度になった5)能しないとする意見もあるしかし,個人の権利義務はそのような実現可能性のみにて法定されるべきであろうか。親権の理論的考察を行い,親権を婚姻関係と関連させて定めている意義を検証し,明らかにされた法的正当性の上に行動様式を設定していくべきではなかろうか。そこで本書においては最終的に,法的には,子どもに対する親の権利義務は夫婦の婚姻にかかわらず存続しうることは否定できないのではないかとの議論を行った。現行法の解釈において,何も新しいことを述べているわけではないが,この基本的なことを理解した上でこそ,次に現実的に子どもの監護をどのように法制度化していくべきかを検討していけるのではないかと考える。わが国においては,共同親権が実現できるほどに現在の社会的支援が整っていないことはたびたび指摘されているところであり,それゆえに賛否で激しい対立があるが,その社会資源を整えるためにも,適切な法的検討が必要であると思われる。

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