日米親
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8自然法の原理により,補助と監護とケアについての権限を有し,それを維持5)。この頃から,コモン・ロー上のし保護する義務があることを明示している6)が介入するように親の子どもに対する権限および義務に対し,次第に国家なっていく。私法上の子どもの監護権(custody)に関する父母間の争いに対する介入がその一つであり,19世紀から裁判上に現れてくることをみる7)。監護権をめぐる国家の親の権利への介入については,第2章ことができる以下において検討する。そしてもう一つは,公教育に関する州の介入である。1852年にマサチューセッツ州が最初の義務教育法を制定し,同様の立法が1918年までに8)。しかし親は,子どもを教育する方針を州が立法によ各州に成立していったり規制することに対し,合衆国憲法に基づき,自らの権利を獲得していった。さらに,子どもとの関係を定める州の家族法に対しても,同じように憲法に対する挑戦を繰り広げていった。ここに,親が自らの権利をparental rightsとして主張し,州が定める規定を合衆国憲法の審査にかけ,それにより違憲9)」が現れてくる。こを勝ち取り州法を変更していくという「家族法の憲法化のようにして,アメリカの家族法は発展していくことになる。が憲法上保護される権利として確立していく変遷を確認していきたい。合衆国憲法に親の権利は規定されていない。しかし今日,判例法上親の子どもに対する権限は,合衆国憲法第14修正により保護される自由であるこ5)McCarthy, supra note 1, at 976.6)序文でも触れたが,アメリカでは家族法は州法により規定されており,親の権利を規定するのは州であるが,観念的にはそれは国家と等しいため,本章では国家と呼ぶこともある。7)Mason, supra note 2, at 54, 59-60 ; Michael Grossberg, Governing The Hearth 283-285 (1985).8)米沢広一『子ども・家族・憲法』10頁(有斐閣,1992年)9)Barbara Bennett Woodhouse, The Constitutionalization of Children’s Rights : Incorporating Emerging Human Rights into Constitutional Doctrine, 2 U. Pa. J. Const. L. 1 (1999) ; Jerome Barron, The Constitutionalization of American Family Law : The Case of the Right to Marry, in Cross Currents : Family Law And Policy In The United States And England 257 (Sanford Katz et al. eds., 2000) ; David D. Meyer, The Constitutionalism of Family Law, 42 Fam. L. Q. 529 (2008).棚村政行「現代アメリカ家族法」川井健ほか編『講座現代家族法1』173頁(日本評論社,1991年),米沢・前掲注8)2頁,辻村みよ子『憲法と家族』2頁(日本加除出版,2016年)。10)アメリカの学説では,従来の子どもに対する親の権限はauthority, powerと表し,国家に対する親の権利はrightと表して,区別して議論するパターンが多くみられる。10)本章では,州の立法に対する親の権利の衝突をみていくことで,親の権限⑵ 憲法による親の権利の保障

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