日米親
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11語,ポーランド語,イタリア語あるいはチェコ語を教える私立宗教学校の成長は,アメリカ社会の平等化と文化的適応の脅威となっていた。英語教育の推進は,移民の子どもたちにアメリカの理想と文化を普及させるためのものであり,子どもたちを現代アメリカの生活に同化させる手段であった。子どもに対する教育を親の自由な権利に委ねることを認めなかった立法は,戦時21)下における国家の政策の一つであったのである当時は同様に,州が様々な立法を通して親の権利を管理したため,これに対し親は,憲法上認められた権利を根拠として,自らの権利を具体的に獲得していくことになる。以下では,合衆国最高裁判例を通して,親の権利の確立とそれに対抗する州の利益を検討していく。子どもの養子縁組に対する同意・拒否権(以下,養子縁組同意・拒否権という)は,親の権利に基づくものである。アメリカでは,子どもが養子縁組をすると,実の親との法律関係は完全に消滅してしまうため,親によるその同22)。自らの権利を意は親の権利の終了と同様の効果をもたらすことを意味する終了させるものであるから,養子縁組同意・拒否権は親の権利のなかでも最も重要な要素の一つである。離婚後の父親には認められていたこの権利が,未婚の父親には保障されていなかった。そこで,1970年代から未婚の父親23)が現れ,親の権利がの養子縁組への関与権をめぐり複数の合衆国最高裁判例婚姻にのみ基づくものではないことがアメリカ法で形成されていくことに20)Woodhouse, Who Owns, supra note 1, at 1004.21)Id. at 1002-1006.22)わが国においても,離婚後に親権者または監護者にならなかった親の普通養子縁組代諾権または同意権の存否が問題となっている(後掲第Ⅱ部第3章第3節)。子どもは親権者の再婚に伴い継親と養子縁組を行うことが多いが,わが国ではこのとき,非親権者は法的に何ら関知しない。しかし,これにより非親権者は,親権者変更申立権を失うこととなり,自らの意思によらずに子どもに対する権利を失う。日本法における親権の権利性およびその範囲について再検討すべき点である。石川稔『子ども法の課題と展開』310頁(有斐閣,2000年)参照。23)未婚の父親の養子縁組に関する一連の判例の検討として,釜田泰介「嫡出・非嫡出による区分と法の平等保護(3・完)―アメリカにおける憲法訴訟を中心として(1968〜80)―」同志社法学33巻1号21頁(1981年),早稲田大学英米判例研究会「事実上の家族をめぐる法的諸問題⑴⑵」比較法学17巻1号187頁(1983年),18巻1号47頁(1984年),米沢・前掲注8)141頁以下に詳しい。。2 未婚の父親の権利⑴ 養子縁組に関する権利

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